あなたの会社は大丈夫?|IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」で知る最新サイバーリスク

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、2006年から毎年「情報セキュリティ10大脅威」を発表しています。前年に発生した情報セキュリティ事故や攻撃の中から、社会的影響の大きかったものを「10大脅威選考会」が選定したものです。
近年は大企業だけでなく中小企業や個人も標的になっており、このランキングを知ることが身を守る第一歩になります。
【2026】 組織向け10大脅威
組織向けの「10大脅威」は以下のとおりです。
1位:ランサム攻撃による被害
詳しくは「特に注目すべき3つの脅威」で後述します。
2位:サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
セキュリティ対策が十分でない取引先や委託先を踏み台にし、最終的な標的となる企業へ侵入する攻撃です。自社だけを守っても不十分で、取引先も含めたセキュリティ管理が求められます。
3位:AIの利用をめぐるサイバーリスク
詳しくは「特に注目すべき3つの脅威」で後述します。
4位:システムの脆弱性を悪用した攻撃
OSやソフトウェアのセキュリティ上の欠陥を突く攻撃です。修正プログラム(パッチ)を速やかに適用することが基本的かつ、重要な対策です。
5位:機密情報を狙った標的型攻撃
特定の組織をピンポイントで狙い、メールや不正ファイルで機密情報を盗む攻撃です。不審なメールの添付ファイルやリンクは開かないことが基本です。
6位:地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)
国家間の政治的緊張を背景としたサイバー攻撃や情報操作などを含む脅威です。インフラや政府機関だけでなく、民間企業も巻き込まれるケースが増えています。
7位:内部不正による情報漏えい等
詳しくは「特に注目すべき3つの脅威」で後述します。
8位:リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃
テレワーク用のVPNや設定ミスを狙う攻撃です。Wi-Fiなど自宅のネットワーク環境やセキュリティ対策が不十分な端末が攻撃の入口になります。
9位:DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)
大量のアクセスを集中させてWebサイトやサービスをダウンさせる攻撃です。自社の業務停止やサービス停止を引き起こし、企業の信頼失墜につながる可能性があります。
10位:ビジネスメール詐欺
経営者や取引先になりすましたメールで担当者を騙し、不正口座への送金を指示する詐欺です。振込依頼や重要な指示については、メールだけで判断せず、電話など別手段で本人確認を行うルール作りが重要です。
特に注目すべき【組織向け】3つの脅威

ここからは、組織向けの脅威の中から特に注目すべき3つの脅威を解説します。
ランサム攻撃による被害|6年連続1位の深刻な脅威
データを暗号化して使えなくし、復元と引き換えに身代金を要求する攻撃です。IPAの組織向け脅威では、6年連続で1位、11年連続で選出されています。近年は盗んだデータを「支払わなければ公開する」と脅す二重脅迫の手口も増えています。
最優先の対策は「定期的なバックアップ」です。ネットワークから切り離した場所にバックアップデータを保管することで、感染時の被害軽減につながります。また、バックアップを取るだけでなく、実際に復旧できるかを確認するための定期的な復旧テストも重要です。OSやソフトウェアの最新アップデートの適用、怪しいメールの添付ファイルを開かない習慣、万一の際の対応手順の事前整備も欠かせません。
AIの利用をめぐるサイバーリスク|2026年初ランクインの新たな脅威
生成AIの活用拡大を背景として、2026年に初選出された脅威です。AIを使って本物そっくりの偽メールや偽の音声・映像(ディープフェイク)が容易に作れるようになり、詐欺の精度が格段に上がっています。また、社員が業務上の機密情報をAIサービスに入力してしまう情報漏えいリスクも深刻です。
対策の出発点は「社内でのAI利用ルールの整備」です。使用を許可するサービスや機密情報の入力禁止といったガイドラインを設け、社員へ周知することが重要です。AIが生成したコンテンツを鵜呑みにせず、送金指示や重要判断には必ず人が確認するプロセスを設けましょう。
内部不正による情報漏えい等|身近だからこそ対策が必要
社員や元社員、派遣社員、委託先関係者など、内部関係者による情報の持ち出しや不正アクセスも深刻な脅威です。退職時に顧客情報を持ち出す、私的な動機から重要データを削除するといったケースが、実際の事件として報告されています。
技術面では、アクセス権限を業務上必要な範囲に限定する「最小権限の原則」の徹底や、操作ログの記録・監視が有効です。運用面では、情報取り扱いルールの明文化と入退社手続きの徹底が重要です。
例えば、退職時に顧客情報を持ち出したり、不満やトラブルを背景に重要データを削除したりするケースが実際に発生しています。特に、管理者権限など強い権限を持つ利用者による不正は、企業へ大きな影響を及ぼす可能性があります。
2026年版【個人向け】10大脅威

個人向けの「10大脅威」も発表されています。こちらはランキングではなく、五十音順で掲載しています。
インターネット上のサービスからの個人情報の窃取
インターネット上のサービスへの不正アクセスなどにより、氏名・住所・クレジットカード情報などの個人情報が漏えいする被害です。
インターネット上のサービスへの不正ログイン
他サービスで流出したID・パスワードを使った不正ログインです。複数のサービスで同じIDやパスワードを使い回さないことが重要です。
インターネットバンキングの不正利用
口座情報を悪用した不正送金です。残高・取引履歴をこまめに確認しましょう。
クレジットカード情報の不正利用
カード情報を盗んだ不正購入の被害です。身に覚えのない請求はすぐカード会社へ連絡してください。
サポート詐欺(偽警告)による金銭被害
偽の警告画面で利用者を騙し、遠隔操作ソフトの導入や金銭の支払いを要求する詐欺です。
スマホ決済の不正利用
不正入手したアカウントでスマホ決済を悪用する被害です。二段階認証や多要素認証(MFA)の設定が有効です。
ネット上の誹謗・中傷・デマ
SNSで根拠のない悪評やデマを拡散される被害で、名誉・心身への影響が深刻です。
フィッシングによる個人情報等の詐取
金融機関や宅配業者を装った偽メール・偽SMSでID・カード情報を盗む手口です。公式アプリからログインする習慣を身につけましょう。
不正アプリによるスマートフォン利用者への被害
非公式アプリで個人情報が盗まれる被害です。信頼できるストアからのみダウンロードしましょう。
メールやSNS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求
アカウント情報の流出や秘密の動画の存在などを装い、金銭を要求する詐欺です。実際には根拠のない脅迫である場合も少なくありません。慌てずに専門機関へ相談することをおすすめします。
まとめ|一度対策したから終わり、ではない
組織向け1位「ランサム攻撃」と7位「内部不正」はいずれも11年連続でランクインしており、根本的な解決が難しい課題となっています。一方、3位に初登場した「AIの利用をめぐるサイバーリスク」は、AIが急速に普及する現代ならではの新たな脅威です。
セキュリティは「一度対策すれば終わり」ではありません。まずは身近なリスクとして捉え、できることから取り組むことが重要です。
出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威 2026」

